映画

音に乗って「バクマン。」

投稿時間2015.12.04シェア数4
公開直後から話題になっていた映画「バクマン。」をやっと観てきた。なんかこう、世間的に騒がしくなってんなってのは感じつつ、だけどあらゆる情報をシャットダウンして、ずーっと観賞するチャンスをうかがっていたのだ。でね、結論から言うけど、ほんと良かった!

「バクマン。」とは

まず「バクマン。」ってなんだってとこから。

これは、ドラマ化や映画化もされた「DEATH NOTE」を世に出した、大場つぐみ(原作)と小畑健(作画)のコンビによる漫画作品。2008年から2012年まで週刊少年ジャンプで連載された。

作品の主人公は、原作と作画のコンビで漫画家を目指す二人組の少年、文才のある高木秋人(シュージン)と画力のある真城最高(サイコー)。

2人が漫画家を目指す過程と、漫画家になったあとの成長や葛藤を描いた作品だ。

ぼくも連載開始からリアルタイムで読んでいたので、けっこう思い入れがある。ジャンプらしいアツい作風で、なんだか読むたびに励まされたような気がする。

ジャンプ誌上でジャンプの裏側を描くっていうのも面白いポイント。「アンケートシステムってえげつないな」とか「こんなに苦労して漫画を描いているのか」とか、物語の展開だけでなく、リアル志向ゆえに描かれた知られざる事実にも驚きっぱなしだった。

原作も素晴らしく面白いのでぜひ読んでみてほしい。

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抽出したエッセンスの妙

というわけで、映画の話。まずは予告動画とかあらすじから。

高い画力に恵まれながらも夢を持たず普通の生活を送ってきた高校生の真城最高は、同じクラスの秀才・高木秋人から一緒に漫画家になろうと誘われる。プロの漫画家だった叔父を過労で亡くした過去を持つ最高は漫画を描くことを拒否するが、思いを寄せる声優志望のクラスメイト・亜豆美保と交わした約束をきっかけに漫画家を目指すことに。

週刊少年ジャンプでの連載を目標に漫画づくりに励む最高と秋人は、敏腕編集者・服部に才能を認められ漫画家としての第一歩を踏み出す。しかし、そんな2人の前に同年代の天才漫画家・新妻エイジが現われる。

映画.com

ぼくは原作のある映画(ぼくが好きな漫画や小説を映画化したもの)を観るといつも思う。取捨選択ってむずかしい。

きっとファンは全てそのまま映像化してほしいだろうし、でも2時間そこそこの映画でそんなことは不可能だし……。ファンが喜ぶものを作ったら映画として成功かっていうとそれもまた違うわけで、とはいえ原作を知っている人間としては"どう違うんだろ"ってところに注目してして観てしまうしね。別にそういった観方が間違っているとも思わないんだけどさ。

ただやっぱり原作を知っている作品に関しては、シーンを削るのはもちろんしょうがないとして、原作を読んだ時にぼくの気持ちを動かしたエッセンスだけはできるだけ映画に受け継いでいただきたいなと。ぼくはいつもそれだけを希望して映画館に向かっているのね。

で、今回の「バクマン。」なんだけど、これはラッキーだった。ぼくにはピッタリハマったとこが多かったんだ。

これはちょっと運の要素が絡むんだけど、原作を読んだ時に好きだったポイントと、原作から抽出して作品に反映されているエッセンスが一致しないことには、そういう気持ちにならないんだよね。

ぼくが原作を読んでグッと来てたポイントって、サイコーとシュージンが「漫画家を目指すぞー!うおー!」って盛り上がってる青春っぽいとことか、ジャンプ編集部や漫画家ってこうなんですよっていう裏側を描いてるとこで、運良く映画ではそこらへんがしっかり描かれてたから良かった。

もし原作を読んで「亜豆とサイコーの恋が良かったよね」とか「漫画の構想を緻密に練り上げる会話劇が面白い」って思ってた人は、ちょっと物足りなく感じるかもしれない。

でね、ぼくは思った。みんな一回原作忘れよ!忘れて観たらこの映画かなりイケてるよ!ってね。これからの自分にもそう言い聞かせていきたい……。

ただ、これは個人的に観ていて悔しいっていうか、ぼくがひねくれているせいでそう思うんだけど、やっぱサイコーとシュージンが特別すぎてね。本質的な部分ではあんま共感できないんだ。

彼らは新妻エイジと比較して「自分たちは天才じゃない」って自己評価してるけどさ、いやいや、めちゃくちゃ才能があるじゃん。「漫画家目指そうか」ってなった初期段階で絵が普通以上にうまくて、小説みたいな複雑な物語が書けてるんだもん。めちゃくちゃ持ってる人じゃんって思うわけよ。

しかもだよ、サイコーはめちゃくちゃカワイイ女の子と結婚の約束してさ、友だちっていうか漫画家仲間みたいなのもいっぱいいてさ、色々気にかけてくれる素晴らしい編集さんが居てくれてさ、天下のジャンプで連載決定て……。

おい!!うまくいきすぎだろ!!!

いや、分かってるよ。これは映画。原作漫画。フィクション。重々承知のうえで言ってる。ずるい!!くやしい!!!

ぼくは中井さんにもなれない卑屈な男、ハンサムクロジ。「卑屈なくせに自分でハンサムとか名乗ってやがる」って笑ってやってくれ。

まぁ、そういった理由でちょっと点数下げたよね。すまんな。

美術がすごい

さておき、あともう褒めるから。

まず美術がすごい。ジャンプ編集部へ向かう廊下のポスター具合とかめちゃくちゃかっこよかった。

ジャンプ編集部の中も本物をほぼ忠実に再現してるって聞いてビックリしたもんね。え、セットだったんだ!って。こちとら編集部で撮影してるって思い込んでたもん。

仕事部屋もすごい。サイコーとシュージンの仕事部屋はもちろん、他のキャラクターの作画風景や部屋の作りも、細部までのこだわりを感じる。

作中、普通ではありえないポイントってのがいくつかあって、例えばサイコーとシュージンにはアシスタントが付いていないし、新妻エイジは別格としても中井さんですら1人で描いてるからね。中井さんくらいの描き込み具合でアシスタント無しって、普通死んじゃうんじゃないかな。分かんないけど。

でもそういうファンタスティックな演出も、小道具とセットの細かさでバランスがとれていて、ゆえに説得力のあるシーンが作れているんだなと思った。

あとは、原稿だ。原作で作画を担当した小畑先生に、作中に出てくる原稿やラフスケッチなんかを50枚以上描いてもらったらしい。

原作もそうだったんだけど、最高たちがジャンプ編集部に持ち込みした時の原稿、連載会議にかかった時の原稿、そして「この世は金と知恵」連載時の原稿と、ストーリーの進行に合わせてちゃんと画力のレベルが上ってるのを表現してんのもすごかった。

そしてエンドロール。あのエンドロール、すごい。ぼくの中でのエンドロールランキングでジャッキー・チェンを抜いた。エンドロールまでいろいろと絶え間ない。

映像がすごい

次は映像を褒める。

なんてったって、まずはプロジェクションマッピングを使った作画風景だ。

ぼくは漫画家さんが絵を描いてる姿にとても魅力を感じるんだけど、でもやっぱり一見すると地味なんだよね。それをあんなにかっこ良くかつ派手にしてる。全体的にそうなんだけど、特にプロジェクションマッピングのシーンはミュージックビデオ感が強くて、観ていて気持ちよかった。

作画中の漫画家の頭の中を再現した、CGを使ったバトルシーンも面白い。映画版「るろうに剣心」のスタッフが殺陣をつけたそうで、剣心&宗次郎が蘇ったようだった。

原作の小畑氏も、大根仁監督との対談で以下のように語っている。

あのシーンは、自分で見ても「作画中の脳内はこうなってるよな」って感じで。あのCGみたいなイメージを、「これが俺の頭の中だ」っていつもアシスタントと共有しています(笑)。

コミックナタリー

大根仁監督によると、長渕剛のミュージックビデオを参考にして作ったらしい。なるほど。

そして極めつけは亜豆美保(小松菜奈)である。彼女が出てくるシーンはなんだかフワフワした光に包まれていて、しかもスローモーションで、別の世界のできごとみたいに描かれてた。

ぼくの中の小松菜奈って「渇き。」で無茶苦茶やってた加奈子イメージが強すぎて、フワフワしてても「うわなんか悪いこと考えてそう!!」って思っちゃうところはあったんだけどね……。でもすごく良い雰囲気だったなとは思う。

[bc url="https://nanokamo.com/kawaki" desc="ぼくはこっちの小松菜奈の方が好きかな!"]

音楽がすごい

音楽も褒めよう。この作品では、劇伴から主題歌の「新宝島」まで全ての音楽をサカナクションが担当してる。いやもうこれだけでオシャレ。サカナクション、ゆえにオサレ。

大根仁監督は、音楽ありきで映画やドラマを作るそうで、企画が決まった段階で音楽を誰に頼むか決めるらしい。

自分が作るドラマや映画は音楽ありきなんで、いつも企画が決まった段階で音楽を誰に頼むかキャストや脚本を書き始める前に決めちゃうんですよね。

音楽ナタリー

編集の仕方も独特で、映像に音楽をあてるのではなく、音楽に映像をあてるんだって。これを知って、だからいろんなシーンがミュージックビデオっぽいんだなと腑に落ちた。

で、主題歌の「新宝島」ね。これいいわー。

映画にリンクした歌詞なんだけど、それでいてサカナクション自体のことも歌ってるし、なによりミュージックビデオ自体が面白い!

ぼくはそもそもミュージックビデオっていう文化が好きだ。特に日本のミュージシャンのミュージックビデオにユニークなものが多いなっていつも思っている。独特の日本っぽさみたいなのがあって、個性的で、カッコイイ。

「バクマン。」は、ぼくが好きな日本のミュージックビデオ文化のひとつの到達点というか、そういう意味で世界に発信してほしい映画だなとも思った。

音楽って大事だよねぇ。

好きなシーン

いろいろ褒めたところで、ぼくの好きなシーン(ネタバレするかも)を発表したいと思う。

地味で申し訳ないし主人公不在なんだけど、連載会議のシーンが一番好きだった。なんかすごく生々しくてリアルな感じがして、しかもそこに居る全員が全力で戦ってる感じにゾクゾクしたんだ。

「バクマン。」っていう映画から青春ドラマっぽい要素を抜いた残りの全てが集約されているように感じたんだよね。

ちなみに漫画家の吉田戦車氏は怖くて吐きそうになったらしい。

あとは、サイコーがポロッと泣いたシーンもグッときた。あの、病院か抜けだして、みんなに手伝ってもらいながら漫画を描いてるとこね。新妻エイジが仕事部屋にやってきて、サイコーの代わりにキャラクターを描こうとするんだけど、それをグッと止めてさ、泣くんだよ。

うまく線を描けない悔しさとか、漫画家としてのプライドとか、そういうのが伝わってきた。もらい泣きしたよ。

あと、そこからの続きのシーンなんだけど、仕事部屋を後にする新妻エイジが、すでに漫画家としての人生を半分あきらめてた中井さんのことを「中井先生」って呼んだところも地味に良かった。

そして、ラスト間際のサイコーとシュージンのハイタッチ!からの連載終了!ザ・スラムダンク!!これにはニヤッとしたね。

最後の黒板のシーンも良かった。そこでも泣いたからね。けっこう泣いた。

続きは映画化されるの?

映画は単行本でいうところの6巻くらいまでを映像化したものだった。

続きがあるのをほのめかすような終わり方だったし、映画自体の評判もかなり良いみたいだから、もしかしたら続編の企画が進んでたりするのかもしれない。亜豆と最高の恋の行方とか、けっこう中途半端な感じで終わっちゃってたしね。

どうなんだろう、あるのかな。あったら嬉しいな……。

あ、あと、映画「バクマン。」がどう作られたのかを知るのに参考になった対談・インタビュー記事も紹介するね。これらを読むとさらに面白いと思う。ありがとう、ナタリー。

[ebc title="映画「バクマン。」特集" url="https://natalie.mu/eiga/pp/bakuman_eiga" desc="インタビューとかいろいろまとまってるよ!"]