1. ナノカモ
  2. 映画とドーナツ
  3. グラスホッパー レビュー
© 2015「グラスホッパー」製作委員会
映画とドーナツ

グラスホッパーレビュー

投稿時間2015.11.09シェア数11

人気作家、伊坂幸太郎の小説を原作とした映画「グラスホッパー」を観てきた。

ぼくは彼の小説を原作とした映画をいくつか観たことがあって、幸運なことにどれもぼくが面白いなと思うものばかりだった。
ので、ぼくにとっては小説家というよりは「映画の原作」の人みたいな認識でいた。

そんななか一作だけ読んだことがある小説があって、それがこの「グラスホッパー」だったのだ。
もちろんめちゃくちゃ面白くて、夢中になって一気に読んだ。で、すっかりお気に入り。

ゆえに、映画化されるにあたって期待度もかなり上がっていた。上がってしまっていたのだ……!
いつもなら原作とかあんまり気にしないんだけど、こればっかりはどうしようもなかったのだよ……。

「グラスホッパー」とは

あらすじ

事故により恋人を失った鈴木は、教員としての職を捨てて恋人の復讐のために裏社会の組織に潜入する。しかし、復讐を遂げようとした相手は「押し屋」と呼ばれる殺し屋によって殺されてしまう。
押し屋の正体を探ろうとした鈴木は、自らの嘘がばれ、組織から追われる身になってしまう。
ハロウィンの夜に渋谷のスクランブル交差点で起こった事故をきっかけに、心に闇を抱えた3人の男の運命が交錯していく。

交わらない三人

まず、冒頭のシーンが良かった。
ハロウィンに浮かれる渋谷ががとても印象的でかっこいい。クールかつちょっとだけ下品に浮かれた東京が描かれていてゾクッとした。

しかし、そこで交わるはずの三人。鈴木、鯨、蝉の運命が、劇中ほどんと交錯しない。これは衝撃的だった。

原作はどうか、それはもうびっくりするほど交錯する。様々な伏線や運命の糸が絡まってラストのカタルシスに向かっていく超名作だ(とぼくは思っている)。

なのに!なのに映画は全く違う!!

映画が終わりに近づいてきてから、やっと山田涼介演じる蝉が鈴木に遭遇する。
で、その時はなった台詞が「誰だこいつ」。

おい、ふざけんなと。交錯するんじゃなかったんかい、と。

鈴木が主人公として物語の軸になりつつ、一方で鯨(浅野忠信)と蝉のエピソードが別で動いていてる演出になっていて、
鯨と蝉を見ながら「いつ鈴木とこのニ人が出会うのだろう、出会ったらどうなってしまうの!?」なんて期待をすればするほど、その気持ちの盛り上がりと比例するように終盤にがっかりする。

もちろんニアミスはあるし、互いに多少は影響しあっているので、それを交わったっていえばそうなのかもれないのだけど……。

なんと言うか、ぼくは原作を忠実に再現せよと言いたいわけではないのだよ。ただ、面白く作ってほしいだけなんだ……。

先が読めすぎる演出に疑問

どういった層をターゲットにしたのか分からないのだけど、先が読めすぎる演出が気になって仕方なかった。

鈴木は序盤ずっと「押し屋」の正体を探っていて、その正体こそがラストの展開に大きく関わってくるのだけど、その明かした時にカタルシスとなる謎のヒントがとにかく多すぎた。

これは本当に要らない。

ぼくは原作を読んでるから仕方ないところもある。でも、原作を読んでない同行者でさえ途中でストーリーの仕組みを簡単に予想できてしまってがっかりしていた。

というか、あまりに露骨だったので、逆に小説とはまた違った仕掛けがあるのではないか、原作を読了していたとしても楽しめるような構成になっているのではないかって深読みしてしまった。

押し屋が軸だったからこその原作

原作は「押し屋」がストーリーの軸になっていて、彼を追う形で鯨、蝉、鈴木の運命が交錯していく。

しかし、映画の展開は全く違う。寺原会長という悪の親玉にめがけて三人が集まっていくようなストーリーになっていた。

ぼくはこれがよくなかったのではないかなと思う。

原作は三人が追う押し屋と“物語上の仕掛け”との関係性が濃いゆえに、全体的にまとまりのある構成になっていた。

映画はそれとは別のレールを敷いてしまったがゆえに、最後まで三人が一堂に会することがなかったし、結果として物語にとって鯨と蝉が必要だったのかすら怪しく観えてしまう。

鯨と蝉が鈴木を見下ろすシーンが特に残念。とってつけたような演出だった。

山田涼介が良い

映画『グラスホッパー』公式アカウント

映画『グラスホッパー』公式アカウント

@Grasshopper1107

【蝉 / 山田涼介】
驚異的な身体能力と華麗なナイフ捌きで人を殺めて生きている孤独な殺し屋。
仕事が終わるとシジミを買って帰るのが決まり事。相棒の岩西は、本当の自分でいられる唯一の拠り所。
#グラスホッパー http://t.co/MfKGh0qRd8

残念なポイントが多かったこの作品の中で、唯一といっていいくらい光り輝いていたのが山田涼介さん。

ぼくはそこそこジャニ好きなので、ぶっちゃけ山田涼介さんがかっこよかったからわりと全体的にオールオーケー!いいよね、山田くんよかった!

まるで踊るように人を殺していて、まさに蝉というか、蝉を山田さん流にブラッシュアップしている感じ。素晴らしかった。あの身のこなし、さすがジャニーズ。ちょっと狂ったような雰囲気もかっこいい。

Twitter で「グラスホッパー」って検索すると、やっぱり女性ファンの「山田様」とか「蝉様」とかっていうツイートをたくさん見つけることができた。彼女らにとって「グラスホッパー」は「山田様の映画」なのだ。ぼくにとってもそんな感じだ。

ゆえに!ゆえにやはりもったいない!

原作どおりであれば、蝉が鈴木を助けるっていう、生田斗真と山田涼介の絡みを楽しめたはずだったというのに!!

我々一同、浅野忠信さんとの絡みだけでは満足できないのである。

くやしい。ただただくやしい。

あ、あと蝉の相棒である岩西(村上淳)もかっこよかった。彼と蝉との掛け合いや電話での会話にはグッとくるものがあったよ……。

鈴木の恋人の死は偶然?

こっから本格的にネタバレするので、気を付けて読んでほしい。ラストにも言及する。

映画『グラスホッパー』公式アカウント

映画『グラスホッパー』公式アカウント

@Grasshopper1107

【百合子 / 波瑠】
鈴木の婚約者で、同じ中学校の給食職員として働いていたが、渋谷スクランブル交差点の事件の犠牲となる。
料理上手で、いつも鈴木の身体を気遣っていた心優しい女性。
#グラスホッパー http://t.co/ho1ZG3mLs0

映画のラスト。恋人の死の謎にせまったせいで関わる人間がみんな死に、遊園地のピエロとして第二の人生を歩むことになった鈴木。
彼の元に押し屋の妻(らしき女)が現れて、押し屋の正体などストーリーに隠された謎(バレバレだったけど)を語りだす。

ここで、実は押し屋は一人で行動していたのではなく、組織として動いていたことが明かされる。
押し屋の妻はもちろん、子どもたちも組織が用意した他人だったのだ。

鈴木の恋人・百合子(波留)は少年をかばって死んだのだけど、その時の少年も組織に属する子どもだったことも知らされ、鈴木は少年から百合子が持っていた婚約指輪を受け取り「タイムカプセルだ!」と叫びながら号泣する。


さて、この裏で何が起こっていたのか。

このシーンで寺西会長を殺害する計画はずいぶん前から立てられていて、鈴木はまさにピエロのごとく踊らされていたということも分かるんだけど、じゃあ彼はいつから踊らされていたのかというのがこの映画のポイントになっている。

劇中では、百合子の死の直後、事件が起きた交差点で鈴木が真犯人を示唆するメッセージを受け取ったところから計画が始まったという風に言及されていて、鈴木も納得して丸く収まったように見える。

しかし、百合子の死は、事故に巻き込まれたとはいえ、組織に関わる子どもを助けたことが原因だったのだ。

もしかしたら百合子の死さえも組織によってコントロールされていて、そこから鈴木を操る計画が始まっていたのだとしたら……とも考えることができる。

残念ながら(?)鈴木をひどい目にあわせる動機が見当たらないので、この推測も破綻してる部分はあるのだけど……。

でも、最後の最後で少しだけ裏切られる感覚になれたのはうれしかった。