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映画とドーナツ

スノーピアサーレビュー

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今回は2013年の「スノーピアサー」。漫画原作のポン・ジュノ映画をレビュー。

良いと思えるところと悪いと思えるところがはっきりしてる映画だった。

フランスのコミックを原作としたディストピアムービー

あらすじ

地球温暖化を食い止めるべく打ち上げられた科学的な物質によって氷河期がおとずれてしまった近未来。打ち上げ成功とともに地球上の大半の生物は死滅してしまい、生き残ったわずかな人類は永久機関により走り続ける列車の中で暮らすこととなる。列車の名前は「スノーピアサー」。人類にとって希望のはずだった列車内は、全てを支配する富裕層と奴隷同然の扱い貧困層に分けられるディストピアと化していた。そんな中、貧困層の主人公・カーティスがは理不尽な支配に立ち向かうべく、仲間と共に反乱を企てる……。

「スノーピアサー」は、「殺人の追憶」や「母なる証明」で知られる韓国出身のポン・ジュノ監督による初めての英語作品

原作のフランスのコミック「Le Transperceneige」における「生き残るために乗り込んだ列車内で人類が貧困層と富裕層に分けられている」という設定にポン・ジュノ監督が惚れ込み、映画化権を獲得したとのこと。

デイビード・ディグス主演でのドラマ化も決定している SF アクションディストピアムービーだ。

ディテールの粗さが目立つ

凍りついた地球、走り続ける電車の中でしか生きられない人類、最後部車両に押し込められた貧困層、反乱と革命……。
非常に興味深い、ぼくとしてはとても惹かれる設定だった。ディストピア大好き!!

しかも主演はキャプテン・アメリカのクリス・エヴァンス。また、ティルダ・スウィントンが個性的な役柄で出演しているというのも魅力的だ。

が、その設定だけでテンションを維持できたのは中盤過ぎくらいまで。ディテールの粗さが目立ちはじめてから一気に熱が冷めてしまった……。


原作コミックの設定や勢いをそのまま映画化するにあたり、その設定に監督が惚れ込んでの映画化だからこそ、原作そのままがゆえに“粗”が出てしまうのはある程度仕方がないのかもしれない。

でも、緻密に描かれた世界観だからこそ生まれる説得力が必要な時ってある思う。あるいは、強すぎる勢いにねじ伏せられるような説得力でも構わなかったから、どちらかが欲しかったなというのが正直な感想。

一番気になるのが列車の構造。大きさというか長さというか、そこら辺が非常に曖昧で……。

主人公たちは列車最後部に押し込められて窮屈な生活をしていて、そこから脱するために列車の先頭部分を目指しているにもかかわらず、いくら前に進もうと電車はずーっと狭いままなのです。

向かってくる敵兵の数に対して列車の大きさが合わず、彼らが優雅に暮らせるようなスペースが用意されているようには見えないのだ!

それでも中盤までは列車内の雰囲気に気圧されて“こういうものなのだ”と納得してた。かなり長い列車だろうし、きっと富裕層はひとりにつき1車両程度与えられているのだろうなと想像したりしてやり過ごしてた。

ところがですよ、途中で気づいてしまったのですよ。なんと列車はそんなに長くないんですよ!

長いようで短い列車、どこからともなく湧いてくる敵兵……。原作はコミックだし、ロールプレイングゲーム的なものとして解釈すればいいのかもしれないけれど、そこまで力づくで持っていけるパワーを感じなかったのが残念でした。

ラストの盛り上がりにはグッとくる

中盤以降、ドアを開けては酷い目に遭う主人公たちを冷めた気持ちで眺めていたのだけど、それでも終盤の盛り上がりには少なからず心を奪われました。

主人公が先頭車両でエンジンを動かす列車の主のもとへ到達してこの列車内で行われていたことの全容が明らかにされたその瞬間だけにはグッと来るものがあったのです。

あまり後味の良くないポン・ジュノ監督らしい味付けに、舌先がピリッとする感覚。とても良い。

そこから主人公たちを始めとした列車に乗り合わせた全人類がどうなってしまうのかは、ぜひご自分の目で確かめてほしいのですが……。

最後の最後にまでポン・ジュノらしさを求めてしまったぼくとしては、多少拍子抜けというか、だいぶ後味スッキリだなと思いました。

革命を成功させた主人公が手にした権力の誘惑に勝てず打ち倒した列車の主に成り代わってしまう……みたいな業の深いラストをぼくが勝手に期待しちゃったのが良くなかった。

それでも、救いはあるものの一抹の不安がよぎるような終わり方(監督が意図したものではないようですが)となっていて、投げっぱなしではあるものの、引き込まれるポイントが残っているところにユニークさを感じたし、期待とは違うけど嫌いじゃないという印象でした。

人の足跡がついていない新雪のように、真っさらな白紙の未来を感じさせる爽やかなラストもまた良いのかもしれません。

これからこの作品を観てみようという方は、近未来 SF ファンタジーRPGみたいなジャンルであることを覚悟して魔王を目指すパーティーを応援するような気持ちで観てほしいなと思う。