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映画とドーナツ

アリスクリードの失踪レビュー

投稿時間2015.10.29シェア数5

人間というものは、色情に迷って理性を失い、判断力が鈍ったまま取り返しのな決断をしてしまうものだ。

痴情のもつれ。色恋における関係が込み入って収集がつかなくなることなんて、ほとんど日常に組み込まれてしまっている。

それは恋人同士や不純異性交遊のみに限定されるものではなく、例えば“結婚”なんていうのも判断力の欠如によるものかもしれない。そんなこと、大きな声では言えないけれど。

……いずれにしろ、恋慕を根拠にした行動って失敗しがちだよなと、映画「アリス・クリードの失踪」を観て再確認した。

アリス・クリードの失踪から始まる物語

あらすじ

富豪の父親をもつ20代の女性アリス・クリードは、2人組の男ヴィックとダニーに誘拐され密室にとらわれる。彼らはアリスを用意していたアパートに連れ込み、冷徹に手足をベッドに縛り付けて監禁。身代金200万ポンドを要求しようと企むが、次第に三人の関係がねじれていき、完璧だったはずの計画がほころびはじめる……。

滑稽で異常、それは紛れもなく現実的

作中、実際に画面の中で動く登場人物はたったの三人。
三人だけなのに、背景に何人もの人物が見えて、彼らを巻き込んでストーリーが展開しているのが分かる。舞台的に削ぎ落とされた“余白の美”みたいなものすら感じた。

その三人が、誘拐犯の二人と誘拐されたアリス・クリード。
最初は加害者と被害者だった三人の関係が、ストーリーの進行と共に形を変え、それぞれの意外な思惑が明らかになっていく。

その関係性の変化が異常で滑稽なんだけど、本人たちはいたって真剣に目の前の問題に取り組んでるのが面白い。東京03のような、舞台的なコントを観ている時のような印象だった。

シリアスな演出との剥離が緩急になているうえ、キャストの演技がとにかく素晴らしいから突拍子もない設定にも説得力が産まれている。

滑稽で異常、突拍子もない設定とストーリーなのに、妙に説得力のある演技。
これって、すごく“現実的”だなと思った。

「事実は小説より奇なり」と言うけれど、まさにそんな感じ。その“奇”を真摯にフィクションにした映画だったように思う。

アリス・クリードの失踪で終わる物語

中盤、様々な秘密が明らかになっていく爽快感も良かった。

誘拐を計画した理由や、誘拐するのがアリス・クリードでなければいけなかった理由、誘拐犯2人の関係性などなど、序盤では読めない衝撃的な展開に何度も驚かされた。

そして、めくるめく内に映画のタイトルにもなっている「アリス・クリードの失踪」の本当の意味が分かるラストを迎える。

このラストがあるからこその、このタイトル。「アリス・クリードの失踪」でないと意味がないラストに思わず膝を打った。

テンポの良い序盤から、秘密が明らかになっていく中盤、その秘密をどう消化していくのかに期待が高まる終盤からタイトルを回収するラストまで、あっという間の怒涛の展開。とにかく最高だった。

デジタル化されていない作品なのでレンタルショップで探すしかないのが残念なポイントなのだけど、よかったらぜひ観てほしい。おすすめだ。