© 2009 Dan Films Ltd, Pictures In Paradise Pty Ltd, The Pacific Film And Television Commission Pty Ltd and UK Film Council
映画とドーナツ

「トライアングル」

投稿時間2015.11.03シェア数6

今日という日は一度しかやってこない。そう分かっていても、どうしたって怠惰に過ごしがちなのが人間というもの。

約束されていない明日に自分の人生を託して、なんとかギリギリの今日を乗り切る。毎日がそれの繰り返しだ。

しかし、その“毎日”は本当に“毎日”なのだろうか。

ぼくらが観測している今日は、本当に昨日になっていくのだろうか……。

そんな確認のしようがない疑問を恐怖として植え付ける映画「トライアングル」をみなさんにおすすめしたい。

「トライアングル」とは

あらすじ

ヨットセーリング中に嵐に襲われたジェスらは、目の前に現れた大型客船に命からがら乗り込み難を逃れる。しかし、船内には人がいた形跡があるものの誰もいない。
違和感を覚えつつも船内を探索していると、覆面をした人物が現れ、ヨットに乗っていた仲間たちの命を次々と奪っていく。

一人生き残り甲板に逃げ出したジェスは、転覆したヨットから客船に向かって助けを求める自分たちの姿を目撃する……。

ラストまで先が読めないストーリー

この映画、できれば前情報無しで観ていただきたい。以下に続くぼくの感想は無視して、今すぐ動画配信サイトへ向かってほしい。

“ラストが読めない面白い映画”っていうワードだけでピンとくる方は、さようなら。迷わずNETFLIXへ。

……というわけで、この映画、非常にぼく好みだった。確実に面白い。

分かりやすいプロット、先が読めない展開、そして意外性のあるラスト。鑑賞後にあれやこれや話したくなる余白も含めて楽しい作品だった。

いわゆる“ループもの”と呼ばれる作品で、繰り返す運命を捻じ曲げ、そこから抜け出すために主人公のジェス(一児の母)が奮闘するというストーリー。……なんだけど、そのループの仕方が気味悪い。

主人公の意識や記憶はそのままに、それ以外の全てがあるきっかけで繰り返してしまう……っていうのがよくあるループものだと思うんだけど、「トライアングル」はちょっと違う。

繰り返す、というより“増える”のだ。

舞台は海の上。ヨットで遭難し、助けを求める男女五人が巨大な無人旅客船に侵入するところから世界が歪みはじめる。

見えない敵、自分と同じ姿の“何か”と対峙しながら、仲間を失い孤独になったジェスが甲板で呆然と海上を眺めていると……なんということでしょう。そこにはヨットで遭難し助けを求めている男女五人の姿が……。

そう、たった数十分前の自分たちが、海の遠く、どこからともなくやってくるのだ。

彼らは増える。全員死ねば同じようにまた客船に流れ着き、船上の一角に死体が溢れる。唯一生き残る運命のもと“ループ”の数だけ存在するジェスたちだけが、“ループ”から抜け出すために奮闘する。

なぜ世界が歪んでしまったのかってのは置いておいて、とにかく脱出のために必死なジェス。終盤まではとにかく彼女を応援しつつドキドキしていられる。
船上で起きていることがどう収束していくんだろ、っていう期待も高まっていくので、飽きずに楽しめられるのだ。

この時間がとにかく楽しい。先を予測しつつ、それでも裏切られるであろうラストに向かって走っていくストーリーに思いっきりワクワクできた。

後悔と罰のループ

ラストの詳しい内容については書かないけど、その時に感じたことだけ以下にまとめておく。

まず、映画冒頭に隠された真意が明かされる。これが「あのセリフってあんな意味だったの!?」「あのカットってこういうシチュエーションだったのか……」っていう純粋な驚きを与えてくれた。

ジェスに対する印象もガラッと変わる。船上では「息子を想う意思の強い母」という印象だったジェスが、実はそれと真逆だったことが明らかになり、そこからどうして「息子を想う意思の強い母」に変化していったのかも描かれる。
ヨットに同行していた女性が妙にジェスを嫌っていたことにハテナマークが浮かんでたんだけど、ラストを観ると嫌っていたのにも納得できた。

どうしようもなかったジェスだけど、船上での経験を経て立ち直り、全てを精算して過去の自分を悔い、息子とやり直すことを決意する。……が、その瞬間に未来が絶たれてしまうという残酷な結末を迎えてしまう……。

その瞬間に生まれた息子への罪の意識と後悔が、自分への罰として無限増殖ループを産んでしまったのかなと、ぼくはそのように解釈した。

それは“賽の河原”という仏教的な言い伝えに似ている。

“賽の河原”は、死んだ子どもが行く所といわれる冥途の三途の川の河原のこと。ここで子供は、父母の供養のために小石を積み上げて塔を作ろうとするが、もう少しで完成というところで必ず鬼に崩されてしまう。

主人公のジェスはこんな状態だったのではないだろうか。

何度繰り返しても絶対にうまくいくことはない無限ループ。石の積み方を工夫したところで、崩す鬼にとっては小さなことでしかないのだ。

ヨット、船上、自宅のトライアングルから抜け出せず、延々と周り続ける無限地獄。
もし生前の罪を償う地獄があるとしたら、きっとこういうものなんだろうなと思った。

明らかになっていない部分への考察

ちなみに、作中では明らかになっていない点が多々あるの少しだけ考察してみる。
これはぼくの解釈であって答えではない。念のため。

ジェスの記憶がリセットされるタイミング

まず、ジェスの記憶がリセットされるタイミングいついて。毎ループごとに記憶が消されているのは明らかなのだけど、消えるタイミングは明らかにされていない。

が、これはヨットでうたた寝して目が覚めた瞬間だと思われる。

このタイミングで過去のループを夢と解釈してしまっているようだった。それまでは前ループの記憶が残っていて、息子を救うべく新たなループに飛び込む決意を秘めていたよう見えた。

ジェスは生きているのか

次にジェスの生死について。これは死んでいると解釈して良いと思う。

息子につらく当たったあと、自動車事故で自分と息子が死亡。この時の後悔と「もう一度生きたい」という意思が「ヨット」「船上」「自宅」のループをジェスの中に作り出して、結果として無限地獄へ落ちてしまったのではないだろうか。

ループを作ったのは誰なのか。それは自分自身かもしれないし、他の誰かかもしれない。
が、ぼくは“他の誰か”だと解釈した。

タクシーの運転手は誰なのか

その“他の誰か”がタクシーの運転手である。

事故のあと自分と息子の死体を見つめるジェス(おそらく霊体)に対して、タクシーに乗るよう促す運転手。彼はおそらく死神的な存在で、「戻ってくるか?待ってるよ」というセリフと、それへの返答によってループが完成しているのではないだろうか。

あそこで戻ってくると言わなければ、ループから解放されるのかもしれない。しかし、ジェスは抜け出せない。息子への想いが強すぎるのだ。

以上、映画「トライアングル」の感想と考察でした。

ストーリーの面白さもあるけれど、心動かされる瞬間もたくさんある楽しい映画だった。おすすめ!